古泉一樹の苦笑


 いつも通りの放課後、SOS団でオセロに飽きた俺は古泉を放置して何故か持ってる新聞を読み出した。

「おや? あなたが新聞を読むなんて珍しいですね」
 うるさい。たまには見聞を広げるのもいいだろ?
「そうですね。ところで気になる記事でもありますか?」
 最近は犯罪ばっかりで面白い記事なんてないな。
「そうですか。犯罪と言えば犯罪者はどんな気持ちで犯罪をしているのでしょうか」
 俺に聞くな。俺は犯罪者じゃないからわからん。
「それは失礼しました。では犯罪者の周囲の人間がどのような反応をするのか実験してみましょう」
 何をするんだ?
「ここは高校生らしく万引きなんてどうでしょう?」
 そうか。がんばれよ。
「あなたがやるんですよ。では明日の放課後にでもこの店で万引きしてください」
 とか言ってルーズリーフに書いた地図を渡してきやがった。
「安心してください。機関の関係している店ですので」
 そういう事か。ハルヒ達の反応を見るって事だな?
「そうです。では明日の放課後にでも」


 そして放課後。俺はハルヒと朝比奈さんとスーパーへ行った。
「ハルヒと朝比奈さん、買う物は決まってるんで外で待っててもらえませんか?」
「ちゃっちゃと行ってきなさい!」


 そうして俺は店に入り、適当にそこらへんのものをつかんで会計をせずにハルヒたちのまつ外へ向かった。

 そして案の定俺は捕まった。 店から出てハルヒたちと合流しようとしたところを警備員に取り押さえられた。
 ハルヒの奥に長門と古泉のが見える。古泉は驚いた様子を見せている。名演技だぞ、古泉。
「キョン! あんた何したの?」
 ハルヒと朝比奈さんは何がなんだかよくわかってない様子だ。
 じっくり見ていたかったが警備員に強引に連れ去られた俺は後でハルヒたちがどんな様子だったか古泉に聞こうと考えてた。

 そうして俺は取調べ室に連れてかれた。 
「なんでこんな物盗んだんだ?」
 あれ? 機関の関係してる店じゃなんですか?
「機関  なんだそれは?」
 えっ? もしかして古泉に嵌められたのか?


 ガチャ


「遅くなって申し訳ありません」


 古泉、信じてたぞ! 一瞬疑ったが。
「あんたは誰だい? なんでこの部屋に入ってきてるんだ?」
「すみませんが諸事情でご迷惑をおかけしました。コレをお受け取りください」
 そういって古泉はある程度厚みのある封筒を店主らしき男に差し出した。
「おい、古泉。ここは機関の店じゃあないのか?」
「すみません説明不足でした。機関の店は隣です」


俺は驚愕したね。手違いというか、店違いでで犯罪者になっちったんだ。それは驚愕もするさ。


「ですから、彼はドッキリをやろうとして店を間違えたのです。
 彼に悪気はないですし、反省もしていてもう二度としないのでコレで勘弁してもらえないでしょうか?」
「そうは言ってもなぁ」
「他にも問題はあるのですか?」
「もう警察呼んじゃったんだよ」


   こうして俺は逮捕された。取りあえず古泉も共犯にしといた。
 聞くところによるとハルヒたちが居たあたりにあったもの全てが壊されており、器物は損という罪も背負う事になった。
万引きだけならともかく、器物破損の罪まで背負った俺と共謀だか教唆だかの罪を背負った古泉は留置所に入れられた。

「災難でしたね」
 うるさい。お前が変なことを思いつかなければこんなことにはならなかったんだ。
「それにしても、涼宮さんたちの罪も被るなんてあなたらしいですね」
 あれは明らかにハルヒ達の仕業だからな。
「それにしても二人で仲良く留置所なんて面白いですね」
 ちっとも? なんでお前はそんなに余裕なんだ?

「そろそろ森と荒川が迎えにくるからですよ? 犯罪者の気持ちはわかりましたか?」

「ここまでどっきりか!」

 横に座る古泉一樹という名のニヤケ面の苦笑いが印象的な一日だった。